仕事や勉強ができる人を観察してみると、「あの人は記憶力が良いんだな」と感じることはありませんか? 必要な情報を確実に自分の中に蓄えておける人は、どのような場面においても有利に動きやすくなるでしょう。
とはいえ、自分は記憶力に自信がないから……なんて思う方にオススメなのが、有酸素運動です。今回は有酸素運動と記憶力の関係性について解説していきます。
有酸素運動で記憶に関するパフォーマンスを強化できる
有酸素運動とは、エネルギー源に酸素を使いながら行う運動のことを言います。無酸素運動よりも体への負荷が少ないという特徴があり、ある程度の時間をかけて実践していきます。
有酸素運動に当てはまる代表的なトレーニングメニューは、以下のとおりです。
- ウォーキング
- 軽いジョギング
- サイクリング
- ヨガ
- エアロビクス
- 水泳
筋トレや短距離走のように、短時間で強い負荷がかかることがないので、さまざまな年代の方にとって取り入れやすいトレーニングメニューだと言えるでしょう。運動に対して苦手意識を持つ方にとっても、オススメできるメニューとなります。
さて、このような有酸素運動は、これまでダイエットや健康維持目的で行われるケースが一般的でした。しかし近年の研究から、脳の機能、特に記憶に関わる分野と密接に結びついていることが分かってきています。
有酸素運動を行うことで、脳内の海馬領域に流れる血液量が増加することが分かっています。海馬は、記憶力を司る場所。その衰えを予防すると共に、パフォーマンスを向上させる役割も果たしてくれます。
有酸素運動をすることで記憶力向上につなげられる理由は、運動をきっかけにして生み出される「BDNF」という脳内物質にあると言われています。
BDNFが分泌されることで得られるメリットは、以下のとおりです。
- 脳内で情報が伝達されるスピードが早まる
- 脳細胞を守る
- 脳細胞の生まれ変わりをサポートする
つまりBDNFは、今ある細胞の働きを守り、積極的にサポートしつつ、新たな細胞の生まれ変わりまで支えてくれます。脳細胞の衰えを防ぐと共に、記憶力の向上につなげてくれます。
記憶力を向上させる有酸素運動のやり方とは?
記憶力向上の目的で有酸素運動を取り入れる場合、その方法が気になるところです。どんな運動をどの程度取り入れれば、記憶力を向上させることができるのでしょうか。
筑波大学などの研究グループが発表したところによると、記憶力を向上させるために必要な運動時間は、わずか10分。必要な運動も、ごく軽いものでOKです。実験で行われたのは自転車をこぐ運動で、10分経過した後にテストを行ったところ、記憶に関わる海馬の活動レベルが上昇したことが分かりました。
実験で取り入れられたのは自転車でしたが、ヨガや太極拳など、ごく軽い運動であっても記憶力向上効果を得られるのでは……と考えられています。ジョギングなど、激しめの運動が苦手な方でも、これならば手軽に取り入れられるのではないでしょうか。
有酸素運動は物忘れの予防にもオススメ
有酸素運動と記憶にまつわる研究は、日本以外でもさかんに行われています。イギリスのバーミンガム大学研究員のケイトリン・セガエルト博士が発表したのは、有酸素運動能力と度忘れに関する研究結果です。
覚えているはずのことを、どうしても思い出せない度忘れは、誰もが一度は経験しているもの。とはいえその発現頻度には個人差があり、また脳の機能が衰えるにつれて増加すると考えられています。
セガエルト博士が注目したのは有酸素運動能力とこの度忘れの関係性についてで、有酸素運動能力が高い人、つまり普段から積極的に有酸素運動を行っている人ほど、度忘れをする頻度が低いという結果が出ています。
なぜこのような結果になるのかと言うと、
- 人間の記憶に関わる灰白質の量の増加
- 脳のエネルギーとなるグリコーゲンの貯蓄量増加
などの理由があると指摘されています。
有酸素運動能力を高めるためには、日々継続的に有酸素運動を取り入れていくことが大切です。脳の機能を守り、度忘れを防ぎ、認知症予防につなげていくためにも、やはり有酸素運動は効果的だと言えるでしょう。
無酸素運動とは違い、有酸素運動は自分自身の意識一つで、日常生活の中に取り入れやすいメニューでもあります。自転車に乗ったり周辺を散歩したりと、ぜひ自分自身が無理なく取り組める内容を検討してみてください。運動と記憶を組み合わせて実践することで、より効率よく物事を記憶していくことができるはずです。
記憶力が良い方もいれば、苦手意識を抱いている方もいるでしょう。とはいえ、ほんの少しの工夫で自身の能力を向上させられるならば、ぜひ実践してみたい!と思う方も多いのではないでしょうか。普段あまり、記憶と運動を結びつけて考えることはないかもしれませんが、
- 物事を覚える前には意識して運動する
- 時間がないときには、運動しながら記憶する
こうした行動を心掛けることで、暗記事項に対する苦手意識も少なくなりそうですね。また有酸素運動を継続し、脳への働きかけを続けていくことで、将来の脳機能を守ることにもつながります。心身だけではなく、脳の健康を守るためにも、ぜひ有酸素運動を取り入れてみてください。