人間の一生のうち、脳が大きく発達する時期といえば、子供時代を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。特に幼児期の働きかけが、非常に重要な意味を持つと言われています。
しかしだからといって、「人間の脳は子供時代にしか発達しない」というわけではありません。大人の脳の発達の仕組みや、効果的な脳トレーニング法を紹介します。
大人になったからといって、脳全体が衰えるわけではない
若い頃は暗記でも勉強でも、もっと難なくできたのに……なんて思うことはありませんか? 特に40代以降を迎えると、
- 物事を覚える力が弱くなった
- 知っているはずの内容を、思い出すのが大変になってきた
なんて感じる方も多いのかもしれません。大人になって脳の衰えを実感する瞬間ではありますが、それほど落胆する必要はありません。大人になったからといって脳全体が委縮してしまうわけではありませんし、「昔と比べてできないことが増えた」と感じるのは、脳の使い方が変わってきたというだけのことなのかもしれません。
たとえば、人間の記憶を担当する脳の部位・海馬は、年齢を重ねても新たな細胞を生み出すことがわかっています。また大人になるにつれて、これまでの経験と共に蓄積される各種知識や判断力は、若い時期よりも高まると言われています。
ただし、脳を使わなければ、その機能はどんどん失われていってしまいます。大人になったら、もう脳は発達しないからと諦めるのではなく、その機能を低下させないためにも、常日頃からトレーニングを意識することが大切なのです。
大人の脳の特性を知った上で継続的なトレーニングを行っていけば、脳をより発達させていくこともできるでしょう。
大人の脳トレーニングの鍵は、知的好奇心!
大人が効率よく脳トレーニングを実践していくために、重要なポイントとなるのが知的好奇心です。仕事でも趣味でも勉強でも、常日ごろから知的好奇心を抱く機会が多い人ほど、脳が発達していると言われています。
- 仕事をより効率的にこなすための方法を、日々模索する
- 趣味の世界に没頭する
- 新しい習い事をスタートする
このような行動は、自分を満足させるためだけに行いがちですが、実は立派な脳トレーニングになります。いやいやながら行動させられるのではなく、自分自身で自発的に、楽しみながら行うことが重要です。
知的好奇心を感じるまま、さまざまな思考を頭の中に描いていくと、いずれ「あのときの○○は、こういうことだったのか!」なんて、関連性も見つかるはずです。個別の物事のように思えた事象が、線のようにつながっていくことで、思考の幅も広がっていくでしょう。脳のパフォーマンスが大幅に向上していきます。
これらの作業に対して「楽しい」と感じることができれば、脳内にドーパミンと呼ばれる神経伝達物質が分泌されます。ドーパミンが分泌されると、人は達成感や快感を得ることができます。またそれだけではなく、記憶力を向上させたり認知能力を高めたりする効果も期待できると言われています。
いくら脳に良いトレーニングを実践していても、それを「楽しい」と感じることができなければ、その効果は半減してしまいます。自分にとって何を選べば楽しいと思えるのか、視野を広くして検討してみてください。
具体的な脳トレーニングの方法とは?
脳トレーニングを行う上で重要なのは、とにかく楽しんで行えること。また自分自身が「できる!」と信じられるメニューを選択することも、極めて重要なポイントとなります。具体的に何をすればトレーニングになるのかわからない……と思ったときには、ぜひ以下の情報を参考にしてみてください。
- ピアノやギターなど、楽器の演奏を学ぶ
- クロスワードパズルを解く
- 音読をする
- 日記をつける
- 新しい言語を学ぶ
- 脳トレ用のゲームを行う
もちろんこのほかにも、効果的な脳トレメニューは数多くあります。自分にできそうなものから挑戦してみることで、トレーニングのハードルを小さくできることでしょう。
ちなみに人間の脳には可塑性(かそせい)と呼ばれる性質があります。これは脳自身が、状況に合わせて変化できることを意味しています。変化の幅は若い時期の方が大きいのですが、可塑性そのものは、年齢を重ねたからといってなくなるわけではありません。
たとえ80歳、90歳になっても、トレーニングで脳を発達させることは可能です。新たな知識や技術を習得することもできますから、ぜひ前向きな気持ちで挑戦してみてください。
ストレス対策や適度な運動も、脳トレーニングの一つ!
脳トレーニングと聞くと、積極的に脳を動かし、考えることで実践できるものと捉える方も多いことでしょう。しかしより身近なトレーニングは、脳の機能を衰えさせないこと。今ある機能を守っていくことも、立派な脳トレーニングの一つとなります。
人間が生きていく上で、どうしても発生してしまうのがストレスですが、過度なストレスは脳の機能を低下させることがわかっています。ストレスを溜め込みやすいタイプであれば、それを上手に発散することも、非常に大切な脳トレーニングになるでしょう。
また1日30分ほどの軽い有酸素運動も、脳の機能を守る上で非常に有効です。軽い運動によって海馬の萎縮が食い止められ、認知機能の向上につなげられます。
適度な運動は、ストレス解消にも役立つもの。ぜひ脳トレーニングメニューの一つとして、継続的に取り組んでみてください。
大人になったからといって、脳の発達をあきらめる必要はありません。適切なトレーニングで働きかけることで、その機能を守り、これまで以上に発達させることもできるでしょう。大人ならではの脳トレーニングに、ぜひ楽しい気持ちで取り組んでみてくださいね。