子どもの頃から、しつけの一環として教わる機会も多い「整理整頓」ですが、正直苦手……と感じている方もいるのではないでしょうか。「自分のデスクが整頓されていなくても、誰も困らないから」なんて、自分自身に言い訳をする方も少なくありません。
しかし、整理整頓はビジネスの効率をアップさせる重要なポイントの一つでもあります。なぜ整理整頓が重要なのか解説すると共に、実際に有名企業で実践されている整理整頓術を紹介します。
整理整頓で仕事の効率アップ
大人になってから整理整頓の重要性を認識するためには、整理整頓と業務効率が、どのように関わっているのか把握する必要があります。オフィスがグチャグチャになっている状態では、さまざまなデメリットが発生してしまいます。それが「当たり前」のときには、こうしたデメリットには気付きにくいもの。まずはどんな問題が起こるのかをしっかりと把握しておきましょう。
整理整頓がされていないオフィスでは、以下のような問題がたびたび起こります。
- 必要な書類、仕事道具を探すため、その他の業務が中断される
- 今必要な物の見極めが難しく、備品の不足が生じる
- 古い資料と新しい資料を間違えて、情報の伝達ミスが起きる
- 必要な物が見つからず、周囲の人に聞かなければならない
この中でもっとも多いトラブルといえば、「探し物が見つからない」というものです。「それを探す時間」も業務時間に含まれるのが一般的ですが、この時間は「何かを生み出すためのもの」ではありません。「無駄な時間」と言い切ってしまっても良いでしょう。
グチャグチャな環境の中では、必要なものとそうではないものの見極めは、極めて難しくなってしまいます。必要なときに必要なアイテムが手元になければ、当然仕事はストップしてしまいます。
資料のミスが原因で情報の伝達ミスが起きれば、会社全体の信頼を失うことにもなりかねません。
こうしたトラブルは、職場全体で整理整頓に取り組むことで、確実に予防できるもの。職場全体にそのような雰囲気がない場合でも、まず自分のデスク周りから整理整頓することで、自身の無駄やトラブルを防ぐことができます。業務効率も高めていけることでしょう。
有効な整理整頓術
整理整頓は、仕事効率を高めるための「基本」とも言える項目です。「どうやれば良いのかわからない」と思ったときには、有名企業で実際に採用されている整理整頓術を参考にしてみてください。身の回りを整えることのメリットを、徐々に実感できるでしょう。
★トヨタ式5S
世界で活躍する日本企業のトップ企業の一つ、トヨタ自動車では、業務効率を高めるために「5S」という考え方を取り入れています。「5S」とは、「整理、整頓、清掃、清潔、躾」のこと。まずは職場から要らないものを処分し、そして必要なものを、わかりやすく整えることからスタートします。
トヨタ式のコツは、見た目の美しさではなく、新人が見ても、何がどこにいくつあるのかわかる状態に整えておくこと。そしてこの状態を、常に保ち続けることが鍵となります。だからこそトヨタでは、清掃を外部業者に委託せず、全て自分たちの手で行っています。
ここからわかるのは、トヨタでは、「汚れたら掃除をする」のではなく「工夫して汚れない環境を作っている」こと。そしてそれを働く人全員のスタンダードにすることこそが、トヨタ式整理整頓術の特徴であり、企業発展の原動力となっているのです。
★コクヨ式整理術
文具や事務機器のメーカーとして知られるコクヨは、徹底した整理整頓術で、使いやすいデスク周りを作り上げています。その理想は、とことん使い勝手にこだわった「寿司屋のカウンター」にあります。
コクヨ式においても、重視されるのは「見た目の美しさ」ではなく、「作業効率の良さ」。そのためにさまざまなルールが定められています。
- 1段目に文具
- 3段目にファイル
- 常に使う文具は机の上
- ファイルやボックスを駆使して、書類管理の手間を最小限に
コクヨ式の整理整頓術の特徴は、「答えは一つではない」ということ。デスクを使う人それぞれが、自分の使い勝手の良さや「楽しさ」にこだわって、整理整頓することができます。定められているルールは、そのための最低限のレールのようなものだと捉えれば良いでしょう。
「仕事と無関係のものも、あえて置いてみる」など、整理整頓術が苦手という人にも、受け入れられやすい内容となっています。
職場における整理整頓は、業務効率を高めるためのカギと言えます。また自分自身の周辺をきちんと整えることで、仕事に対するモチベーションアップにもつながりやすくなるでしょう。「苦手でつい後回しにしてしまう」という方は、今回紹介した有名企業式の整理整頓術も活用してみてはいかが。スッキリした環境の中で、存分に能力を発揮できるのではないでしょうか。