美しい姿勢をキープすることは、決して簡単なことではありません。さまざまな習慣や癖によって、少しずつ乱れていってしまうものだと言えるでしょう。
しかし、姿勢が悪くなると、さまざまなデメリットが生じることがわかってきています。姿勢が悪いことによる危険性と、姿勢を良くするための方法などを詳しく紹介していきます。
姿勢が悪いことによる弊害とは?
姿勢が悪くなることによる弊害は実にさまざまです。まずは「見た目」の問題が挙げられるでしょう。姿勢が乱れれば、それはそのまま、その人の印象をだらしなく感じさせる原因になってしまいます。実際にはそうではなくても、猫背の人に対しては、「ネガティブで自信なさげ」といった印象を抱く方も多いはずです。
また、姿勢が悪くなれば、人間の健康面にも多大な影響を及ぼしてしまいます。姿勢が乱れれば胸が圧迫され、呼吸状態にまで影響を及ぼしてしまいます。筋肉の硬直や内臓の機能低下を引き起こしてしまう可能性もあるのです。
さらに姿勢の悪さは、脳の働きを低下させることもわかってきています。背筋が曲がった状態では、脳の処理能力は大きく低下してしまいます。次々と入ってくる情報を処理するために欠かせない、短期的な記憶力が低下することで、効率が悪くなってしまうというわけですね。
姿勢が崩れた状態では、脳は体を「休息モード」と判定します。このため、ノルアドレナリンという脳内物質の分泌量が低下し、脳の覚醒レベルが低下してしまいます。「なんとなくボーっとする」「全然やる気が出ない」といった問題は、実は脳ではなく、「姿勢」が深く影響を与えているのかもしれません。まず「姿勢」を矯正することが、問題解決の第一歩につながる可能性もあるでしょう。
姿勢を良くすることによる効果
姿勢が悪くなると、さまざまなデメリットが生じてしまいます。しかし、自身が抱える問題に気付くことができれば、大丈夫です。姿勢を良くするだけで、さまざまな良い効果を期待できるからです。
まずは姿勢を良い状態にすることで、全身の血流状態が改善します。血液と共に、酸素や栄養が体の隅々まで行き渡ることで、「集中する力」や「考える力」が上昇します。リラックスモードから仕事・学習モードへと切り替えるためにも、効果的な方法だと言えるでしょう。
また、先ほども解説したとおり、姿勢が悪くなると、脳の働きは低下してしまいます。一方で、姿勢を良くするだけで、その機能は上昇することがわかっています。情報処理に欠かせない短期的な記憶能力も向上しますから、業務もスムーズに進めていけることでしょう。
さらに歪んだ姿勢をそのまま継続していくことは、体に余計な疲れを溜め込むことにもつながってしまいます。肩こりや腰痛で悩む方の多くは、「その姿勢に問題がある」とも言われていますから、ぜひチェックしてみると良いでしょう。これまで頭を悩ませてきた辛いコリ症状とも、姿勢改善をきっかけに、お別れできるかもしれません。
姿勢を良い状態にすることで、運動能力の向上や自律神経系の改善などの面でも効果が期待できると言われており、まさに「良いことずくめ」の状態だと言えます。
姿勢を良くするためにはどの筋肉を鍛えると良いのか
姿勢が悪いとデメリットばかりで、姿勢を良くするだけでさまざまなメリットを得られるようになるのであれば……「さっそく姿勢を矯正したい!」と思う方も多いのではないでしょうか。それはとても良いことです。
しかし、実際に「良い姿勢」をキープしようとしても、「短時間ならできても、すぐにまた悪い姿勢に戻ってしまう」なんて方も多いのではないでしょうか。これは、「良い姿勢」をキープするための筋力が身についていないからこそ、起こる事象です。
つまり、「姿勢を良くしたい!」と思ったときには、単に「背筋を伸ばせばよい」「鏡を見てバランスを取れば良い」というわけではない、ということです。それをキープするための筋肉にまで目を向けてみてください。
良い姿勢をキープするために関わる筋肉としては、以下のようなものが挙げられます。
- 大胸筋
- 腹直筋
- 腸腰筋
- 脊柱起立筋
- 広背筋
- 大殿筋
- 大腿四頭筋
- 下腿三頭筋
「え? そんなにあるの?」と思った方も多いのかもしれませんね。これらの筋肉は、背中やお腹、そして足部分に広がっている筋肉で、良い姿勢を保つためには欠かせない筋肉となっています。
「どれか一つだけ」ではなく、あくまでもバランスよく、全身を鍛えていく必要があると言えるでしょう。まずは正しい姿勢をしてみて、自分の体のどこに力が入っているのか、鍛えるべき筋肉について、自分自身が体感してみるのもオススメですよ。
姿勢を良くするために効果的なストレッチ、筋トレ
姿勢を良くするためには、体内の複数の筋肉をバランスよく鍛えることが必要です。とはいえ、普段運動不足の人が、突然激しいトレーニングを行うことはあまりオススメできません。日常生活の中で、無理なく取り入れられるストレッチやトレーニング法にて、少しずつ状態を改善させていきましょう。
【ストレッチをする】
まずは筋肉を伸ばすためにも、丁寧にストレッチをしてみましょう。
- アキレス腱を伸ばす
- 片足を前方に伸ばし、両手でつま先をつかむ
- 片足で立ち、もう片方の足を後ろに曲げて、お尻のところで持って伸ばす
- 腕を90度に曲げて、胸を大きく開く
- 前方に体を大きく倒し、背中を伸ばす
ストレッチのコツは、それぞれの動作をゆっくりと丁寧に行うことです。筋肉が伸びる感覚があったら、20~30秒ほどキープしましょう。それぞれ5回ずつ繰り返すと、ストレッチだけでも良い運動になります。
【筋力トレーニングをする】
ストレッチに慣れたら、次はより積極的に筋力トレーニングをしていきます。
- 椅子に浅く座り、背中を倒したり戻したりする
- 椅子に座った状態で、大きく足踏みをする
- 椅子に座った状態で、腕を大きく上にあげる
- 椅子に座った状態で、片足ずつ大きく蹴り上げる
- 壁や椅子で体を支え、上下に動かす
- うつぶせになって、片足ずつ上にあげる
- 仰向けになって体の前で手を組み、足を踏ん張って腰を上げる
筋トレのコツは、骨盤を安定させることを意識して、しっかりと動かすことです。どの筋肉が動いているのか、意識しながら行うとより効果的です。
「姿勢が悪い」という自覚がある方は、気付かないうちにさまざまな「損」を抱えているのかもしれません。良い姿勢を身につけることが、問題解決の第一歩となるのかもしれませんね。今回紹介したトレーニング法も参考にして、ぜひ「良い姿勢」を目指してみてはいかがでしょうか。
参考サイト
- 「姿勢の悪さ」が子供の心にも影響? 原因&見分け方&改善法も-子どもとお出かけ情報サイト「いこーよ」
- 「脳」の処理能力 上げるなら「背筋」を伸ばす!-NIKKEI STYLE|ライフスタイルに知的な刺激を―日経の情報サイト
- 集中力アップ! 「脳が目覚める座り方」とは?-AERA dot.
- よい姿勢は成績アップにもつながる! やる気が生まれる、正しい姿勢って?-ベネッセ 教育情報サイト
- 正しい座り方は、「背筋ピン」ではなく「お尻をグイッ」-プレジデントオンライン
- 姿勢について-NTT東日本札幌病院 リハビリセンター理学療法士 堀内秀人
- 正しい姿勢で立つだけでも筋肉は鍛えられる!姿勢とインナーマッスルの関係-トレチエ 知ってトクするトレーニングのはなし – So-net