現代の子育てにおいて、注目されているのが非認知的能力です。これから先の未来を生きる子供たちが、より幸せで、経済的にも安定した生活を送るために重要となるのが、この能力だと言われています。
では非認知的能力とは具体的にどのようなもので、なぜ重要視されているのでしょうか。非認知的能力を伸ばすためのコツと共に紹介していきます。
非認知的能力とは、認知的能力以外の力
非認知的能力という言葉を聞いたことはあっても、具体的にどのような能力のことを示しているのか、よくわからない……と感じている方は、決して少なくありません。非認知的能力とは、認知的能力以外の力のこと。認知的能力とは、IQなどで測れる力を意味します。
【認知的能力】
- 文字を読み書きできる能力
- 計算ができる能力 など
【非認知的能力】
- 目標に向かって努力する力
- 周囲の人と上手に関われる力
- 自身の感情をコントロールする力
- 新しい物事に挑戦する力
- 自主的に取り組む力
- 最後までやり抜く力
- 失敗したときに気持ちを切り替え、再度挑戦しようとする力 など
認知的能力と比較すると、非認知的能力は非常に多岐にわたるもの。学力などと違って、テストで測る機会もないため、どこか漠然とした印象を抱いてしまうのかもしれません。
非認知的能力が重要視される理由とは?
ではなぜ、このような非認知的能力が子育て中に注目されているのでしょうか。それには、教育経済学者であるジェームズ・ヘックマン氏が過去に行い、発表した研究結果が関わっています。彼が行ったのは、以下のような実験です。
【ペリー就学前プロジェクト】
- 調査委対象は貧困世帯の3~4歳の子供たち123人
- 対象者の約半数に、幼児教育を実施(家庭訪問による家庭サポートも実施)
- 幼児教育を受けたグループは、受けなかったグループと比較して、40歳時点での収入・持ち家率・学歴が高く、逮捕率や生活保護の受給率が低い
こちらのプロジェクトがスタートしたのは、1960年代のこと。その後、子供たちの成長を追いかけるようにして、調査は継続していきます。
幼児教育を受けた子供たちの学力(IQ)は、受けなかった子供たちよりも高かったのですが、9歳ごろになるとほとんど差は無くなります。よってジェームズ・ヘックマン氏は、両方のグループの間の差は、認知的能力ではなく非認知的能力にあったのではないかと仮説を立てています。
周囲の人とうまくやっていく能力が高ければ、社会の中で自身の能力を発揮しやすくなるでしょう。また諦めずに頑張る力が育っていれば、一つの物事に粘り強く取り組み、やがて成功を収められる可能性も高くなるはずです。
ジェームズ・ヘックマン氏は2000年にノーベル経済学賞を受賞しています。それと共に、子供たちの非認知的能力を伸ばすことが、実は学力を伸ばすことよりも重要であるということが、広く知られるようになってきたのです。
非認知的能力を伸ばすためには、幼少期の働きかけが重要!
ジェームズ・ヘックマン氏が行った実験には、もう一つ大きなポイントがあります。それは、幼少期の教育の重要性についてです。彼が行った教育的プログラムは、就学前のわずか2年間のみ。それにも関わらず、子供たちのその後の人生に、非常に長く、そして大きな影響を与えていることがわかります。
つまり就学前の子供たちにどう働きかけるのかが、非認知的能力を伸ばせるかどうかのカギとなるということ。2017年に行われた学習指導要領の改訂により、保育園や幼稚園においても、非認知的能力を伸ばすための働きかけが積極的に取り入れられるよう、カリキュラムが変わってきています。
子供の非認知的能力を高めたい!と思ったときには、周囲の大人たちが以下のような働きかけを意識することが重要です。
- 子供の主体性を大切にする
- 子供との会話の中で考えを深める
- 子供が思う存分楽しめる環境を用意する
- 子供にとって適切なサポートをする
子供の非認知的能力を高めるために、もっとも重要なのが主体性です。子供が自分自身で考え、実行に移す中で、決断力や思考力が高められます。「これをやりなさい」「あれはやっちゃダメ」と指示するだけではなく、子供自身に「どうしたい?」と問いかける習慣を作ってみてください。
とはいえ、子供の能力にはまだまだ限界があり、適切なサポートをすることも重要なポイント。「諦めずに頑張って達成できた!やった!」と思えるような体験を、一つ一つ積み重ねていきましょう。
学童期以降も、親の関わり方で能力は向上する!
小学校に入学すると、本格的に学力を向上させるための勉強がスタートしてきます。認知的能力が注目される機会が増え、非認知的能力の影は薄くなってしまうかもしれません。
ただし6歳~9歳までの時期は、子供の心が大きく発達する時期でもあります。まだまだ非認知的能力がぐんと伸びる時期でもありますから、ぜひ親の関わり方に意識を向けてみてください。
★自分で考えられる環境を作る
子供のことが心配だからこそ、「宿題やったの?」「明日の準備は?」「ゲームばっかりやっていないで!」なんて、つい指示し過ぎてしまうパパ・ママも多いのではないでしょうか。しかし、親が支持する→子供が従うという流れの中では、子供自身の主体性は伸びません。
それぞれの行動の意味を親子で確認した上で、子供の選択肢を増やしてみてください。失敗することもあるかもしれませんが、次に失敗しないためにはどうすれば良いのか、振り返りをすれば大丈夫です。
★体験遊びを取り入れてみる
子供が小学生になると、「一緒に遊ぶといっても、何をすれば良いのかわからない……」なんてことはありませんか? こんなときには、ぜひ身近な体験を遊びに取り入れてみてください。大人にとっては当たり前のことが、子供にとっては大冒険にもなり得るはずです。
- 買い物に行ってカレーの材料を買う
- 実際に家で料理をしてみる
- おばあちゃんの家まで、電車で出かける
初めてでわからないことがあれば、親子で一緒に考えながら、計画を立てましょう。計画を立てる力にそれを遂行する力、途中でトラブルが起きたときの対処の仕方など、生きた経験の中から多くのことを学び、自身の能力を大きく成長させてくれるはずです。
前向きなアドバイスをする
子供がテストで悪い点を取ってきたときや、何か大きな失敗をしたとき、つい子供の全てを否定するような言葉がけをしていませんか? こんなときには、前向きなアドバイスを心がけることで、子供の自己肯定感や、失敗から立ち直る力を育てていけます。
- 次は○○をしたら、うまくいくかもね
- △△はできているから、あとは××だね!
こんな言葉がけをすることで、子供の中にも、次に何をするべきか具体的なビジョンが浮かぶはずです。「よし、次こそは!」なんて意欲も、順調に育てていけることでしょう。
子供の人生に非常に大きな影響を与える、非認知的能力。効率よく育てるためには、幼少期から適切な働きかけを行っていくのがベストです。子供自身の考える力や、へこたれない力、やり抜く力やコミュニケーション能力など、目には見えにくい力を、ぜひ大切に育ててみてくださいね。