職場における人材育成手法として注目されているのが、「コーチング」です。部下を育てるために活用する方も多いのですが、幼児期の子供たちの人格形成や自立心を育てるためにも活用できます。コーチングスキルについての詳細や、幼児教育への活かし方について解説します。
コーチングスキルとは?
コーチングとは、もともとスポーツの世界で取り入れられていた人材育成方法です。コミュニケーションを通じて、相手の能力・可能性を引き出し、目標達成を支援する方法のことを指します。コーチは、先生のように「あれをしなさい」「これをやらなきゃだめ」と、指示することはありません。あくまでも目標達成を目指す個人のサポート役として、本人の中にすでにある答えを気づかせてくれます。
コーチングスキルは、欧米各国で積極的に取り入れてきたもの。欧米では、特にスポーツやビジネスの場において、自分専用のコーチを持つ方も少なくありません。日本でコーチングが有名になってきたのは、ここ20年ほどのことでしょう。欧米各国と比較すると、まだその歴史は浅いものの、徐々に浸透してきています。
コーチングスキルを幼児教育に取り入れようとする動きも、ここ数年で非常に活発になってきています。親が子供に対して、命令形や指示型ではない関わり方を実践することによって、非常に多くのメリットを得られるでしょう。
コーチングの目的は、対象者の自立性や成長を促し、自身の力を発揮させることにあります。コーチングスキルは100種類以上もあり、相手の状況や目的に応じて使い分けていきます。
コーチングで覚えておきたい基本スキル3つ
コーチングスキルの世界は、非常に奥深いもの。専門知識を身につけようと思うと、時間も手間も、コストもかかってしまうでしょう。「幼い子供のために、より手軽に取り入れてみたい!」と思うときには、基本スキルを頭に入れておくのがおすすめです。たったこれだけでも、子供との向き合い方は変わります。
★スキル1「傾聴スキル」
コーチングの基本は、相手の話に耳を傾けるところからスタートします。「相手の話を聞くなんて…普段からやっている!」と思う方も多いかもしれませんが、本当の意味で傾聴できているかどうか、今一度確認してみてください。
傾聴とは、相手の話に全集中し、耳を傾けることを言います。自分にとって都合の良い内容だけを聞くことでも、他の作業をしながらなんとなく聞くことでもありません。また、相手が子供で、拙くわかりにくい内容であったとしても、最後まで口を挟まず、集中して聞くことが大切です。
人が発する言葉に、無駄なものは一つもありません。話の内容はもちろんのこと、声の調子や表情、しぐさにまで注目して相手の話を聞いてみましょう。特別なアドバイスをしなくても、聞いている間に、子供自身が自分で答えを見つけ出すかもしれません。
★スキル2「質問スキル」
傾聴スキルと共に、覚えておきたいのが質問スキルです。傾聴して得られた情報を元に、相手に対して、新たな視点や気づきを与えるのが、質問の役割となります。
・どうしてそう思ったの?
・もし逆の立場だったら、どんな風に思うだろう?
・ほかにどんな選択肢があるかな?
コーチングスキルにおける質問のコツは、答えを限定しないオープンクエスチョンを取り入れること。これによって子供たちは、より自分の意見を深めていけます。自分ではまだ気づいていない新たな視点に気づけるのも、質問の効果です。
質問に慣れていない時期には、親も子も、なかなか会話が弾まないこともあるかもしれません。こんなときにはまず親が、質問力を磨きましょう。また、「どんなことでも自由に発言して大丈夫」という雰囲気作りも大切です。
★スキル3「承認スキル」
コーチングスキルの基本、3つ目は承認スキルです。相手のことを承認し、褒めるスキルとなっています。スポーツの世界においても、厳しいだけのコーチの元では、選手は大成しません。自身の努力や結果を認め、思い切り褒めてくれる人がいるからこそ、「もっともっと頑張ろう!」と思えるのですね。
幼児教育にコーチングを取り入れる際には、こちらのスキルが非常に大きな意味を持ちます。上手に活用することで、子供の承認欲求を満たし、自尊心を高めることができます。
幼児期のコーチングで得られるメリットとは?
幼児期にコーチングスキルを取り入れた教育を実践することで得られるメリットは、以下のとおりです。
- 子供の自主性を伸ばせる
- 自発的な行動を促せる
- さまざまな場面に対応できる、応用力が身につく
- 自己肯定感が高まる
- 自分で考え、自分の言葉で伝えられる
これからの時代を生き抜くためには、言われたことだけをやっていれば良いのではなく、自分の頭で考え行動する能力が求められます。自分の考えを積極的に伝え、周囲とコミュニケーションをとることも重要視されるでしょう。日常生活にコーチングスキルを取り入れることで、子供たちが持っている力を上手に伸ばしていくことができます。
ただしコーチングも完璧ではありません。一定の成果が出るまでには、それなりに長い時間がかかりますし、子供のタイプによっても効果に差があるでしょう。コーチングの基本を知った上で、一つのツールとして活用してみてください。
まとめ
スポーツやビジネスの世界で注目されるコーチングスキルですが、幼児教育にも応用できます。傾聴と質問、承認という3つの基本スキルで、子供の自主性や自発性を伸ばしていきましょう。
幼少期から「自分自身で考え、問題を解決できる力」を身につけておけば、その後の長い人生において、必ず役に立ってくれるでしょう。まずは身近な大人が関わり方を変えることで、子供の成長を促してみてはいかがでしょうか。