親から子へと着実に受け継がれていくのが遺伝子です。親子で顔や体格が似通っていることに対して、疑問を抱く方は少ないでしょう。ごく自然に、「遺伝による影響」を受け入れていると言えます。
一方で「才能」や「能力」についてはどうでしょうか。「自分にはなかったけれど、子供には才能を発揮してほしい!」なんて思った経験はありませんか? 今回は「才能や能力が親から子供へと遺伝するのかどうか」という疑問について、説明していきます。
親から才能、能力は遺伝するのか?
子供が生まれたときに、「この子はいったいどんな大人に成長するのだろう」と思い描く方は少なくないでしょう。夢や希望に満ちあふれて、「よし! この子はオリンピック選手にしよう!」なんて考える方もいるのかもしれませんね。
しかし「オリンピック選手になる」という高い目標を叶えるためには、本人の努力や周囲の環境と共に、「遺伝的要素」が重要な意味を果たすと言われています。最近の研究では、運動や音楽、そして知能面においても、遺伝的要素による影響は、決して少なくないということがわかっています。
とはいえ、親から才能や能力を遺伝により受け継いでいたとしても、それを伸ばすための環境が整っていなければ、その能力をフルに発揮することは難しいでしょう。また親自身が、「自分自身の才能にまだ気が付いていない」という可能性もあります。
さらに遺伝による影響は、100%子供に現れるわけではなく、あくまでも確率の問題となっています。子供の遺伝子は、父親と母親の両方の遺伝子から決定されるわけですから、「両方の遺伝子の掛け合わせにより、初めて表面化する才能」もあるはずです。
つまり才能や能力は、親から遺伝する要素がある一方で、それが全てではないということです。子供の中にはさまざまな可能性が秘められていて、どのような環境の中で生活していくのかによって、発現する才能や能力には違いが現れると言っても良いでしょう。
遺伝子検査で子供の能力などが分かるか?
子供の才能や能力に、遺伝的要素が関わっていると知ったときには、「子供が幼いころから適切な関わり方をするために、遺伝子情報をチェックしたい」と考える人もいるでしょう。実際にこうした需要に応えるように、市販の遺伝子検査キットなども登場しています。
こうした遺伝子検査は、子供の中にある、目には見えない遺伝的要素を知る手がかりとなります。しかし、才能や能力といった側面から見ると、まだまだ不確定な部分が多いという実情もあります。遺伝子検査キットで子供の遺伝子情報を知ったとしても、それが子供の「才能」とどう関わっているのか、実際にはまだわかっていないことも多いようです。
また、子供の才能や能力は、遺伝的要素によってのみ決定されるものではありません。遺伝子情報だけを鵜呑みにして、両親が子供の可能性を狭めてしまうようなことがあれば、それは子供にとっての不利益と言えるでしょう。
このような実情から、「遺伝子検査キットで子供の才能がわかるのか?」という問いに対する答えとしては、「わかることもあるかもしれない」ということになります。
非常に曖昧ですが、それは子供が無限の可能性を秘めているからこそ、遺伝子検査を行っても行わなくても、子供の教育に関心を持ち、さまざまな経験の中で育てることが、才能や能力を発揮させるためのポイントだと言えそうです。
才能や能力の多くには、親からの遺伝が関わっています。しかし子供は親とは違う別の人間で、子供の全てが「親からの遺伝によって決まる」というわけではありません。遺伝子の情報は、人間を形作る「設計図」のようなものだと言われています。その設計図を使ってどう成長していくのかは、子供自身や環境次第なのかもしれませんね。