子どもの健やかな発達をサポートするために、「食生活」を整えることは非常に重要なポイントとなります。「食生活に気を付けて」と言われると、つい「食事の内容」や「栄養面」へと目を向けがちですが、実は「噛む」という動作も重要であるということを、ご存知ですか?
「よく噛む習慣」と「脳の発達」にはどのような関連性があるのでしょうか。また脳の発達以外にも、「よく噛む習慣」がもたらしてくれるメリットについて紹介します。
よく噛むことが脳に与えるメリット。よく噛むことが脳トレにもなるのか?
よく噛んでものを食べることは、脳の発達とも密接に関わっています。ものを噛むためには、口周りやあごの筋肉をバランスよく使わなければいけません。「かたいものばかり食べていると疲れる」と感じるのは、それだけ筋肉を使っている証拠でもあるのです。
さて、口元やあご周りの筋肉を「噛む」ことで使うと、脳が刺激されて血流が活発になることがわかっています。人間の脳には知性をつかさどる「前頭前野」と呼ばれる部位があり、「ものを噛む」ことで刺激されるのは、ちょうどこの部位となります。
よく噛んで食べれば、前頭前野の発達につながり、前頭前野が発達すれば、自身の感情を適切にコントロールできる能力のほか、物事を計画的にこなしたり判断したりする能力が高まっていきます。よく噛む習慣を身につけたからといって、すぐに学力がアップするわけではありませんが、「学習した結果を、確実に自分の中に蓄積していくための能力」の向上につながるというわけですね。
また、人間にとって「噛む」という行為は、リズム運動の一つでもあります。覚醒レベルを上げると共に、心をリラックスさせる作用があることがわかってきています。集中力や記憶力を高める効果もあるとされていますから、子どもの脳の力を高めるために非常に重要な役割を果たしていると言えるでしょう。
よく噛むことのメリット(脳以外に対して)
子どもにとって「よく噛む」という習慣は、非常にさまざまなメリットをもたらしてくれるもの。以下を参考にして、ぜひ積極的に取り組んでみてください。
1.虫歯予防につながる
人間の口腔内には、噛めば噛むほど唾液が分泌されるという特徴があります。唾液の働きは、主に食べ物の消化吸収をサポートすること。そしてカルシウムと結び付いて歯を強くするほか、口の中の汚れを洗い流し、清潔性を保つという役割も担っています。唾液が多ければ、こうした機能も高まり、虫歯予防につながります。
2.食べ過ぎ予防
食生活の欧米化と共に、徐々に増えているのが子どもの肥満です。子どもの時期から肥満になると、さまざまな健康リスクが高まってしまいます。よく噛んで食べる習慣を身につければ、満腹中枢を刺激して、少量でもお腹がいっぱいになった!と感じることができます。食欲のセーブにつながり、食べ過ぎを防ぐことができます。
3.表情筋が鍛えられ、表情が豊かになる
先ほども説明した通り、「噛む」という行為はあごや口周りに筋肉を発達させることにつながります。あごや歯の発達に良いというのはもちろんのこと、顔の筋肉を刺激することが豊かな表情を作るためのポイントにもなります。ニッコリと素敵な笑顔で笑える子どもは、外見的にも魅力的です。「噛む」という行為が、このような場面においてもサポートをしてくれるのですね。
子どもにとって「よく噛む」ということは、非常にメリットが大きい行為です。とはいえ実際には、「柔らかいものの方が喜ぶから」「かたいものを食べる習慣がない」などの理由で、つい敬遠してしまいがちなものでもあります。
毎日のおやつや夕食の一品など、時間に余裕があるときには、ぜひ「よく噛む」ことを意識した食べ物を取り入れてみてはいかがでしょうか。
参考サイト
- 子供の頃からよく噛む習慣を―病院・医院検索のマイクリニック
- かむ習慣は、5歳までに身に付けよう!―ママ・パパ・子どもの学びと育ちを応援するお買いものサイト 学研 おやこCAN
- 「よく噛むこと」と「咬めること」の効用―岐阜県歯科医師会
参考文献
- 陰山英雄 神山潤 瀬川昌也(2007)『「早起き」は生きる力!』株式会社晶文社