私たち人間の体は、毎日の食事から作られています。成長期の子どもにとって、毎日きちんと食事をとって、大きくなることは重要なこと。しかしそれだけではなく、毎日の食習慣が脳の発達とも密接に関わっていることをご存知ですか?
朝食をとらないことで引き起こされる悪影響や、子どもの脳にとって良い食べ物や悪い食べ物など、今日から実践できる食事の工夫について紹介します。
朝食を抜くことの害
「朝起きるのが辛い」と感じる子どもを持つ親にとって、「朝子どもを起こし、身支度を整え、朝食を食べさせる」という行動は、決して簡単なことではありません。幼稚園や保育園、学校などに通っている場合、「起こして着替えさせるだけで手いっぱい」となれば、朝食時間がカットされてしまうケースも少なくありません。
しかし、「朝食を抜く」という行為は、人間の脳にとって非常に大きなリスクを伴うもの。なぜなら朝食は、脳が働くために必要なエネルギー源であるためです。脳が働くために必要なブドウ糖は、ご飯やパンなどの炭水化物に多く含まれています。残念ながら脳は、長時間エネルギーを蓄えておくことができません。午前中にしっかりと脳を活性化させようと思ったら、朝食のタイミングでしっかりとエネルギー補給を行うことが重要なのです。
朝食を食べた子どもの脳と、朝食を食べなかった子どもの脳について、午前中のパフォーマンスを比較すると、食べなかった子どもは10%~20%程度低下してしまうことがわかっています。「朝食を食べなかった」というだけで、子どもは非常に不利な環境に置かれてしまうのですね。
とはいえ「うちはおにぎりやトーストを食べているから大丈夫」と安心するのは危険です。ブドウ糖は、その他の栄養素とバランスよく組み合わさることで効果を発揮しますから、「主食だけ」ではなく「主食とおかずを組み合わせてバランスよく食べる」ことが重要なのです。
脳に良い食べ物と悪い食べ物
脳の発達と毎日の食事には深い関わりがあります。それはつまり、毎日の子どもの食事をきちんと管理することで、周囲の大人がその発達を適切にサポートしてあげられるということです。自身の目標を達成するために頑張っている子どものためには、ぜひ「脳に良い食べ物」を用意してあげましょう。
脳に良い食べ物として、よく知られているのが「魚」です。魚の脂にはDHA(ドコサヘキサエン酸)という成分が多く含まれていて、脳の神経細胞を発達させてくれます。脳の働きを高めるためには、非常に大切な栄養素なのです。
また、洋食よりも和食を積極的に摂取した方が、子どもの脳の発達には良いとされています。朝食時には、ごはんと納豆、お味噌汁など、和定食風メニューを用意してみると良いでしょう。
反対に「脳に悪い食べ物」としては、「甘いお菓子」や「ジュース」などが挙げられます。これらは子どものおやつとしても人気で、「ついつい食べたがる」という性質のものかもしれません。しかし、日常生活の中で甘いお菓子やジュースを過剰に摂取すると、ブドウ糖の供給過多状態に陥ってしまいます。
すると子どもたちは、落ち着きがなくすぐに疲れを訴え、攻撃的になるということがわかっています。すでに「甘いお菓子やジュースが習慣になっている」という場合には、それらを避け、食事のバランスを整えることが大切です。
脳に良い栄養素
最後は、大人も子どもも積極的に摂取したい、脳に良い栄養素についてです。人間の脳の6割程度は、油からできています。このため、質の高い脂質を積極的に摂取することが、健やかな脳の発達を促すために重要なポイントとなります。
質の高い脂質とは、必須脂肪酸の一つでもあるオメガ-3です。積極的に摂取している子どもの脳は、ぐんぐんと成長していきます。それだけではなく、妊娠中に積極的にオメガ-3を摂取しておけば、生まれてきた子どもの脳にも良い影響を与えることができると言われています。必須脂肪酸にはもう一つ、オメガ-6もあり、両者をバランスよく摂取することを意識しましょう。
またもう一つ、積極的に摂取したいのがリン脂質(レシチン)です。リン脂質は、人間の体の細胞のすべてに含まれていて、脳の発達にも心身の発達にも深く関わっています。
リン脂質は卵や大豆に比較的多く含まれていますが、毎日の食事の中で必要量を満たすのは、決して簡単なことではありません。毎日の食事で補うことを主に考えつつも、どうしても不足してしまうときにはサプリメントなどを賢く使うことも、検討してみてください。
また、「脳に良い栄養素」のみを単独で摂取しても、思うような効果が得られないことも多いもの。「主食と副菜をバランスよく摂取すること」に勝る食事はないと言われていますから、ぜひこちらについても意識してみてください。
毎日の食事について、子どもが自分で管理をすることは難しいもの。ここはやはり、周囲の大人が適切なサポートを行うべきでしょう。
また、大人自身が安定した精神状態の中、ベストなパフォーマンスを発揮するためにも「朝食」は重要なポイントとなります。栄養と脳の関係性にも目を向けて、適切な食生活を送ってみてください。
参考サイト
- 脳を育てる食事ってどんなもの? 子どもの成功を支える食生活の秘訣―マイナビニュース
- 天才児の脳は食事がつくる!子供の頭脳を育てる食べ物とは?【七田式食学】―しちだ・ライフ公式WEBマガジン
- 20年後に後悔しないための子どもの食事。「脳を育てる」「身長を伸ばす」秘訣とは!?―ダ・ヴィンチニュース
- こどもの脳を育てる食事とは?朝食は受験合格への突破口―タニタ健康応援ネットからだカルテ
- 子どもの朝食「パンだけ」「ご飯だけ」はダメ! 脳トレの川島隆太教授に聞いた、正しい食べ方―ハピママ
参考文献
- 坂本州子(2000)『幼児期の心を育てるよい食事 正しい食生活習慣から健康レシピまで』PHP研究所